800MHz、プラチナバンドってなに? (1)  特徴とメリット


最近、au(KDDI)のCMではしきりに「800MHz」だとか、「800MHz(メガヘルツ) だから良い」というニュアンスのことが流れます。しかし、ユーザーの多くは「800MHzってなに?」「どう良いの?」という状況ではないでしょうか?
また、少し前まではソフトバンクがSMAPのCMで「プラチナバンド」をアピールするCMをしていました。このプラチナバンドも実際のところなんだ? という人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ごくごく簡単に「800MHz」と「プラチナバンド」について解説します。

auのホームページ。高速通信4G LTEで、800MHzを使用していることを強調しています

auのホームページ。高速通信4G LTEで、800MHzを使用していることを強調しています

 

800MHz、プラチナバンドはスマートフォンで使う電波の周波数のこと

「800MHz」と「プラチナバンド」はどちらも携帯電話(スマートフォン)の電波の周波数のことを指しています。

日本の携帯電話やスマートフォンには現在、概ね4つの周波数が使われています。

・700~900MHz(プラチナバンド)
・1.5GHz
・1.7GHz
・2GHz (2.1GHz)

今回、話題にしたいのは 700~800MHz(プラチナバンド)と2GHzです。
上の箇条書きの通り、プラチナバンドはだいたい700~900MHzあたりのことをさし、「800MHz」もプラチナバンドのひとつです。

プラチナバンドは携帯電話やスマートフォンに適した周波数とされているため、価値が高い周波数、という意味でそう呼ばれています。

 

なぜプラチナバンドがケータイに適しているのか?

周波数によって電波の性格は大きく変わってきます。

2GHzなどの高い周波数は直進性が高く、大容量データ通信のやりとりに向いています。しかし、直進性が高いということは回り込みが苦手です。周波数の高い電波としては日光などの光をイメージしてみてください。すばやく真っ直ぐ光は届きますが、障害物があると影ができます。影は光が届かない部分です。

周波数が低いと回り込みができます。イメージは音です。音はある範囲内であればまんべんなく届きますし、壁が薄いと隣の部屋の声が聞こえるように、やや透過性もあります。

スマートフォンや携帯電話で言うと、2GHzに比べて周波数の低い700~900MHzはビルや建物を回り込んだり、ある程度は透過するため電波が入りやすいのです。また、基地局から届く電波の範囲も広いため、山岳部などでもひとつの基地局がカバーできる範囲が広く通信事業者の負担も少なくで済みます。

イラストは「わかる! スマートフォンのすべて」(日経BP社刊)より

イラストは「わかる! スマートフォンのすべて」(日経BP社刊)より

じゃあ、みんなプラチナバンドを使えばいいじゃないか、ということになりますが、これにはちょっとした歴史があります。

まず、周波数は国が通信事業者に割り当てるもので、誰でも勝手に使っていいというわけではありません。

実は、800MHzは新しいものではなく、最も古い、アナログ方式の携帯電話から国が割り当てて使われていた周波数です。そのため、当初から事業を行っていたNTTドコモとKDDIはこの周波数をかねてから利用していて、今に至っています。

しかし、iMode等がきっかけで携帯電話が一気に普及して電波が混み合ったとき、800MHzは利用者がギュウギュウだから、新たに導入するFOMAなどの高速データ通信の携帯電話は新たな2GHzを使っていこうよ、2GHzの方が大容量データ通信には向いているし・・ということになったのです。

そこでNTTドコモはFOMA、つまりデータ通信が多く利用される3Gでは2GHzを積極的に使用するよう基地局の拡充などを行いました。しかし、auは新たな3Gではデータ通信は2GHzを使うものの、音声は800MHzを主軸に残したのです。
始めてみると2GHz拡充をはかったFOMAは当初、新しい基地局の拡充が追いつかずトラブルが連発したこともあって評判を落としました。NTTドコモは、3Gでも800MHzを使い続けるKDDIには当時、不満を漏らしていました。

今では3強のひとつソフトバンクは後発のため、国からプラチナバンドを割り当てられていませんでした。それもあって、つながりやすいような環境を思うようには作れず、孫社長は「プラチナバンドの周波数を割り当ててもらいたい」と兼ねてから国に対して懇願してきたのです。

その思いが叶って900MHzが割り当てられました。iPhoneは900MHzに対応しているので「3G」サービスで繋がりやすいプラチナバンドでの通信サービスとその拡充を2012年夏からはかってきたのです。

SMAPによるソフトバンクのプラチナバンドのCMでは、矢印に見立てた電波が高層ビルの間や中にクネクネと曲がって入っていく様子が描かれていましたが、それは電波が入りやすい、繋がりやすいという意味なのです。ただ、ソフトバンクから見ると祝プラチナバンドの意味合いのCMですが、NTTドコモやauからみれば、「もうとっくにプラチナバンドやし、うちら」というものであったかもしれませんね(^^;)。

まとめると・・

 

  • プラチナバンドは、携帯電話やスマートフォンで使われている周波数のひとつで、700~900MHzのことをさします。
  • 800MHz もこの周波数のことで、プラチナバンドのひとつです。
  • 回り込みやすいため、携帯電話やスマートフォンが繋がりやすい周波数とされています。
  • 800MHzはNTTドコモとauが使えますが、特にLTE通信では au が基地局の拡充を図っています

更に言うと、auはこの800MHzに対して入れ込む、もうひとつの理由があります。

> 次ページ「800MHz、プラチナバンドってなに? (2) スマートフォンとプラチナバンド」を読む

 


Text: 神崎洋治
デジタルカメラやスマートフォン、モバイル通信、パソコンなどIT系ライター兼コラムニスト。最新書籍は「体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ 第三版」。メールマガジン(無料)に登録してください。週刊デジマガの更新時にお知らせします。一緒に勉強しましょう!!


新発売】 2013年12月19日
書籍「体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ 第3版」 
book-dc-250週刊デジマガでこのコラムを執筆している著者の最新作。デジタルカメラの構造から撮影のしくみ、撮像素子、レンズ、画像エンジン、記録メディア、手ぶれ補正、ライブビュー、顔検出、デジタル画像の基礎知識、仕様表の読み方まで解説。デジタルカメラを初めて使う方からデジタル一眼レフやミラーレスを使用している写真愛好家の方まで必携の1冊です! (日経BP社刊 神崎洋治/西井美鷹著)



初心者&親と子のためのスマートフォン安心豆知識

スマホがワカッタ! プロが教えるスマートフォンの基礎知識

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>